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デジタルサウンドとアナログな生楽器の音楽

音楽−デジタルとアナログ

音楽は、多くの人にとって好きなものであるようですね。学校の音楽の時間はあんなにきらわれていたのに、実はみんな音楽が好きだなんて、どういうわけなのでしょう。

きっと (少なくとも私の頃の) 音楽の授業ではクラシック音楽しかやらず、流行歌(?)やポップスなどを取り上げないからですね。私はクラシック音楽大好き人間なので、みんながクラシック音楽に興味がないのが少し悲しかった記憶があります。

でも大人になると、実はクラシック音楽が好き、という人も結構いることがわかり、これまたどういうわけなのでしょう、と思います。たぶん学校時代は、クラシック音楽=にっくき音楽の授業という図式が成り立っていて、ほんとはクラシック音楽が好きでも (イジメられるから?!) 言い出せない、ということなのでしょう。

私自身は小さい頃から楽器をやっていて、音楽=アナログなもの=自分で演奏するものというイメージが強いですが、巷のポップス系音楽やテレビなどの BGM、通信カラオケの「オケ」、さらにゲームの BGM などは、デジタル音楽(デジタルサウンド)の天下のようです。

さすがに歌だけはデジタル楽器で置き換えることができず、アナログの生身の歌手が歌っていますね。やっぱり音楽の本質的な部分はアナログであるようです。

デジタル音楽の優位な面は何なのでしょうか。アナログなアコースティック楽器でできない新しい音を創造できるということもありますが、これはむしろごく一部の「売れていて芸術を追究できる」アーティストだけができることだと思われます。

もっと一般的な利点は「人件費を削減できる」ことではないでしょうか。こう言ってしまうと夢も希望もないですが、予算の限られた制作現場では切実な問題であると予想できます。

デジタル音楽なら一人で作曲家 兼 編曲家 兼 演奏者 兼 指揮者 兼 録音エンジニアと何役もこなして、フルオーケストラ風の音楽一丁上がり、というのも不可能ではないようです。

私も趣味のレベルではありますが、ちょこっとデジタル音楽に手を出したことがあります。まあ、いちどやってみたかった、という程度のことです。

Mac を買ったときに、Performer という有名なシーケンサー(音楽演奏ソフト)を知り、早速音源とともに購入して、気に入った曲 (といっても場違いにクラシックだったりしましたが) を打ち込んで、とてつもなく速いテンポで演奏させて喜んだり、という、きわめて低レベルなものでした。

友人が持ってきたポップスのバンドスコアを打ち込んで、CD と聞き比べて必死に少しでも似せようと奮闘しましたが、及ぶわけもなく「やっぱりこの世界もプロは凄いんだ」と当たり前のことを再認識したりしておりました。

このとき私が強く感じたことは、「あ〜、デジタル音楽って、ひとりぼっちなんだ…」

私は小学校の頃の学芸会のアコーディオン合奏で「はまって」から現在まで、アンサンブルの楽しさのトリコになっています。複数の人間が集まって、それぞれ違う個性をぶつけあい、ときにはケンカしながらも一つの音楽を作り上げていく、という、きわめてアナログなプロセスが、苦しいながらも楽しいのです。

長じてからも学校の吹奏楽や社会人のオーケストラなどで活動していた私にとって、コンピュータや音源などの「キカイ類」だけを目の前に、たった一人ですべてを行うデジタル音楽は「耐え難く孤独な」世界でした。

確かに、人とケンカしなくても音楽のすべてが自分の能力の範囲で思うとおりになります。でも私にはそれがあまり嬉しくなく、孤独であることの辛さがまさったのです。

どうやら私には「孤独なアーティスト系」は全くもって不向きであるようです (当たり前か…)。これが、独奏曲風であるならまだ良かったかもしれません。ひとりぼっちなのに合奏もどきなのが、よけいさみしいのです。

アコースティック楽器の生合奏、という、これだけでも充分にアナログな世界にいながら、最近私はもっともっとアナログな音楽に興味を持っています。昔々の楽器たち、いわゆる「古楽器」による古〜い音楽の演奏です。

これら昔々の楽器では、たとえば弦楽器では羊の腸、「ガット」でできた弦を使います。それも現代のもののように、セットしやすいように端っこが工場で加工されていたりはせず、切りっぱなしそのままのものを手で結びつけるのです。

切れやすく狂いやすいのでしょっちゅうチューニングをしなければなりません。デジタル楽器のように電源を ON にすれば即演奏、というわけにはいきません。しかしそこから出る音は、ほんとうに生身の音がします。

現代楽器に慣れた耳には多少違和感があるかもしれませんし、好みの問題もありますから一概によいとはいえませんが、私はこの生身の音がとても好きです。

良い音がしますように、と弦を丁寧に結びつけ、一本一本丁寧にチューニングして奏でる音楽。不便さの中に心の豊かさをみる思いがします。